フィンランド語で12月はクリスマス月「ヨウルクウ Joulukuu(Joulu=クリスマス+kuu=月)と呼ぶとおり、12月はクリスマス一色になります。
冬至に向かって日照時間がかなり短くなり、私の住んでいたタンペレという南の街でも、日が出てようやく明るくなるのが午前10時、午後3時には早くも日没です。ところが、真っ白な雪が積もると街の景色が明るくなり、行き交う人たちの気分は一気に華やぎます。
イルミネーションや室内でのキャンドルの明かりをみんな大切にして、クリスマスの訪れを楽しみに待ちます。そして、小さいクリスマス「ピックヨウル Pikkujoulu (Pikku=小さい+joulu=クリスマス)」と呼ばれる友達や職場の仲間が集まってのクリスマス会もあちこちで開かれ始めます。
友達の家にピックヨウル(クリスマス会)に招かれた時のこと、キッチンで料理や片付けをする友達夫婦の様子がとても新鮮でした。夫はキッチンのオマケではありません。パーティの日の晴れ舞台だけに登場したふうでもありません。普段から自然に二人で立ち働いていることが、すんなりとわかりました。
できる人ができる事をできる時にやる。
そんなフィンランドの暮らし。
共働き家庭だから、だけが理由ではないかもしれません。男女問わず、既成の役割イメージにとらわれることなく、家事や育児もパートナー同士で協力し合い、省けることは省いて、子供たちとの時間、家族で過ごす時間を、シンプルな方法で大切にしています。できる人がやるうちに、どちらかに負担が片寄ってしまうこともありません。
料理教室でも紹介しているフィンランドのミルク粥「リーシプーロ Riisipuuro」も、サーモンスープ「ロヒケイット Lohikeitto」も、子供のいるフィンランド人男性から教わりました。男の人も日々の暮らしの中で料理をしているという証拠ですね。
クリスマスイヴこそ内輪の身内だけで過ごしますが、ピックヨウルが続くクリスマス休暇には、「もう一人の親」に会いに行く子供たちもいます。フィンランドは離婚率が高いのです。片親と暮らしている子供も少なくありません。親にはすでに新しいパートナーがいたり、そのパートナーとの間に生まれた子供も一緒に住んでいる場合も。複雑な環境ではありますが、離れていてもお互いの存在を大切にし合い、クリスマスという特別な時期に集まって同じ時間を共にします。
大きな街ではクリスマスパレードが行われ、街の中心部では大きなツリーにイルミネーションが灯されます。寒く暗い時間が長い国の冬は華やかな季節でもあるのです。
クリスマスマーケットでは様々な食材やクリスマスらしい手工芸品の販売が始まり、街全体がクリスマスムードに包まれます。
各家庭のクリスマスツリーは本物のモミの木に飾り付けをし、1月6日まで飾ります。
タンペレのクリスマスツリー photo by Kahvila Amuri
日本の大晦日さながら、クリスマスイブの午後になるとほとんどのお店が閉まり、公共の交通機関も止まり、街が静まり返ります。人々は教会のミサに参列したり、自宅やコテージでクリスマスサウナに入ったりして大切な家族との時間を過ごします。子供たちが楽しみにしているのは、やはりサンタクロースからのプレゼント。フィンランドのサンタさんは子供たちが起きている時間 に玄関から入って来て、
「良い子はいるかな?」
と言って、プレゼントを渡してくれます。
サンタクロースはラップランドの山奥でトナカイやクリスマストントゥと呼ばれる妖精の小人たちと一緒に生活していると言われています。トントゥ tonttu は日頃からサンタさんの手伝いをしていて、子供たちが良い子でいるか物陰からそっと見守ったり、クリスマスプレゼントの準備をしてくれてるんですよ。
サンタクロースの手伝いをする森の妖精「トントゥ tonttu」photo by Kahvila Amuri
フィンランドのクリスマス料理もここでご紹介しましょう。
ピパルカック @ カハビラアムリ ポップアップ料理教室 塩漬けにした豚肉にスパイスをまぶしてオーブンで焼き上げたクリスマスハム「ヨウルキンク Joulukinkku 」、赤かぶや人参を使った彩り鮮やかなサラダ「ロッソリ Rosolli 」、ラーティッコ Laatikko と呼ばれる根菜類のキャセロール、ダークシロップやスパイスを使ったほんのり甘いクリスマスパン「ヨウルリンプ Joululimppu」などです。
コーヒータイムにはジンジャーブレッド「ピパルカック Piparkakku 」や、クリスマスパイ「ヨウルトルトゥ Joulutorttu 」を楽しみます。
そして、飲み物で欠かせないのがシナモンやカルダモンの風味豊かなホットワイン「グロギ Glögi」。スライスアーモンドやレーズンを入れて飲むのも特徴です。大人はウォッカ入りのグロギを飲みますが、子供たちも楽しめるように、ノンアルコールで仕上げることもあります。ウォッカ入りのグロギは体がとても温まり、寒い国の冬の飲み物らしさを感じます。
また、クリスマスの朝によく食べられるのが「リーシプーロ Riisipuuro」というミルク粥です。お米を牛乳でじっくり1時間程煮て、プルーンなどのドライフルーツで作った甘いシロップをかけて頂きます。
クリスマスハム「ヨウルキンク Joulukinkku by Kahvila Amuri クリスマス料理は全て手作りする家庭もありますが、ハムもサラダもキャセロールも、市場やスーパーマーケットでも売られていますから、思い思いの準備の仕方でクリスマスを迎えられるのです。
普段の食事だけでなく暮らし全てに言えることですが、何に時間をかけるか、何を大切にするかは、家庭によってそれぞれです。「こうあらねばならぬ」を基準にして暮らしている人たちは私の周りにはいなかったように思います。
スーパーマーケットには便利なお惣菜がたくさん揃っていて、忙しい平日は出来合いのものを利用したり、簡単なスープを作る程度で食事の準備の負担を軽くして、時間のある週末にしっかりと料理するというような、リズム感あるスタイルを自然に取り入れています。
できる人ができる事をできる時にやる。
共働きで忙しくても、料理でも家事でも、できるときにはするのは楽しいこと。難しいときには無理せず簡単に。
家族や友達と和やかな時間を過ごす一年で最も大切なお祝い、クリスマスは26日まで続きます。
タンペレのクリスマスパレード photo by Kahvila Amuri
草稿: カハヴィラアムリ Kahvila Amuri , 亮子
編集 ・ライティング: LAMPIONAIO , Etsuko