Vappu 2009 Tampere フィンランドの森から

待ちわびた春を迎える日「Vappu」のすごし方

Vappu 2009 Tampere フィンランドの森から
Vappu 2009
ゴールデンウィーク中の5月1日は労働者の祭典、メーデー。ヨーロッパでは夏の訪れを祝う日でもあり、フィンランドではVappu(ヴァップ)という、学生たちのお祭り日です。長く寒い冬を過ごした後、待ちかねた春の到来をお祝いし、学生に限らず、街全体がお祭りムードに包まれます。高校を卒業したばかりの面々は、記念にもらった白い帽子を被り、街に繰り出します。この白い帽子を被るのはその春の卒業生だけでありません。学生時代の帽子を毎年、Vappuには必ず被るという先輩世代もたくさんいます。街全体が一体となり、大きな盛り上がりを見せます。
Vappu 2009 Tampere フィンランドの森から
Vappu 2009
2009年のVappuの様子
この年はよく晴れていました。
Vappu 2009 Tampere フィンランドの森から
Vappu 2009

タンペレでは毎年、タンペレ工科大学の1年生がクレーンで吊ったゴンドラに乗り、川に沈められるという儀式(イベント?)があります。年によっては雨でかなり肌寒いVappuを迎える場合もありますが、気温がどうあれイベントは行われます。この川にはNäsijärvi(ナシ湖)の水が注いでいてます。氷が解けたばかりの湖の水ですから、相当冷たいはずです。でも学生たちはそんなことお構いなし。酒瓶片手の学生もいれば、ほとんど裸の学生もいて、賑やかというよりは、馬鹿騒ぎと表す方がふさわしいでしょう。それを見物する大人たちも、「また馬鹿なことをやって…」と呆れたり、不快な気分に陥るのではなく、「今年もやってるね〜。」といったおおらかな反応で、自分たちは自分たちでヴァップを楽しむといった様子です。
楽しむ時も自分は自分、他人は他人という境界を明確に持っているのかもしれません。岸辺でピクニックをしながら春の日差しを浴び、歓迎ムードさえ伴って学生たちの騒ぎを見守ります。学生たちは盛り上げ役とも言えるのでしょうね。

Vappu 2010 Tampere フィンランドの森から
Vappu 2010
この年の Vappu は雨上がりのかなり気温が低い日でした。
子供に毛糸の帽子を被らせて出かけたほどの寒さでしたが、イベントの内容は毎年変わりません。

Vappu 2010 Tampere フィンランドの森から
Vappu 2010
雪解けのNäsijärvi(ナシ湖)の水が手前から奥へと流れるています。
空を覆いつくした雨雲と限りなく0度に近い川の水。寒さが伝わってきます。
Vappu 2010 Tampere フィンランドの森から
Vappu 2010
Vappu 2010 Tampere フィンランドの森から
Vappu 2010

私は、フィンランド人は真面目、親切、物静かな人が多いという印象を持っていますが、Vappuのを楽しむ人たちの様子から、イメージとは違った、フィンランド人の陽気でおもしろい一面を見つけました。冬の時期に家にこもる“静”のフィンランドと、春になって動き出す“動”のフィンランドのどちらにも魅力があり、人々はその季節その季節を上手に楽しんでいます。

さて、いよいよ食べ物をご紹介しましょう。Vappuに欠かせないものは、シマ(Sima)という炭酸飲料と、ティッパレイパ (Tippaleipä)という揚げ菓子です。その他にも、春のピクニックではミートボールやポテトサラダなど、お好み次第で様々な品が登場します。シマ(Sima)は既製品も市販されているポピューラーな飲み物ですが、手作りするのも楽しいものです。イーストで発酵させるために寝かせておく1週間くらいのその間、春という季節の訪れを待つその時間が、私は大好きです。

Sima Tippaleipä フィンランドの森から
ティッパレイパ Tippaleipä & シマ Sima

新緑の白樺 フィンランドの森から
5月になると白樺の若葉も一気に出てきます。
5月に入ると木々の緑が出始め、外ですごすのが気持ちの良い季節になります。大通りには夏限定のオープンカフェができたり、レストランのデッキやテラスにもテーブルと椅子が置かれ始めます。太陽が出た途端、半袖になる人が多いことには驚きました。気温が10℃ちょっとしかない日でも、太陽が出ていると半袖姿で歩く人の姿が見られます。寒くても、とにかく日を浴びることを大切にしていることがよく分かりますね。
こうして、フィンランド人は大好きな太陽の季節を迎えます。3月、4月の鬱陶しい雪解け時期を切り抜けて、待ちに待った爽やかな新緑の季節の到来です!
フィンランドの5月の湖畔 フィンランドの森から
青空と新緑と湖
これぞフィンランドの5月。外に出ずにはいられません!
爽やかなイメージのあるフィンランドですが、問題を抱えていないわけではありません。アルコール依存症の人が多いということがその一つに挙げられます。冬の暗く寒い期間が長いことなども要因とされているようですが、気持ちの良い季節が巡って来ると、そんな人たちも外のベンチに何人かで集っている姿をよく見かけました。じっと家にこもりがちな冬から開放されて、誰もが太陽を求めて外へ外へと意識の方向が変わるのですね。

フィンランドについて語っていると、気候に関しては日本のそれを表現する時以上に「違いが大きい」ことを実感します。同じ時期でも年によって気温の差に大きな違いがあり、日々の天気も激しく変化します。一日の中でも、いい天気だと思って出かけ矢先、急に雨雲がかかり、あっという間に雨が降り出したりするのです。天気予報は毎日マメに確認していました。

天気が悪くて期待通りの外出が叶わない日があるからでしょう、好天に恵まれると「今日は子供たちと外で思い切り楽しもう!」という気持ちになり、ベビーカーを押しながらいろいろな場所によく出かけていました。天気のいい日、気候のいい季節に外ですごさないのは勿体ない!そんな気分になるのです。フィンランドの人たちは、長い冬、雪解け雨の多い時期の憂鬱があるからこそ、太陽のありがたさを知っているのだと思います。

ヴァップからの数ヶ月間。誰もが春・夏を思う存分楽しもうと意気込み、フィンランド全体が開放的になる晴れ晴れとした季節です。

草稿: カハヴィラアムリ Kahvila Amuri, 亮子
編集 ・ライティング: LAMPIONAIO, Etsuko

5月になると近所の公園に咲いていた“ハートのお花”
日本では「ケマンソウ」、「タイツリソウ(鯛釣り草)」。
英語では “bleeding heart”。