今回は、1月から2月にかけてのフィンランドの様子をご紹介します。
盛大なクリスマスのお祝いが終わると、年越しがやってきます。街の中心部でカウントダウンが行われ花火が上がり活気がありますが、年明けは日本のような賑やかさはなく、2日、3日から仕事始めの人も多く、静かに日常生活が戻ってきます。
氷点下の気温が続きますから、雪の日が多く、積雪量が増えます。日によっては樹氷がきれいに見られ、まさに一面の銀世界です。
雪が降り積もった時でも、早朝から除雪車が街中を走り回り、大雪だからといって公共機関が止まることはなく、日常生活が滞ることはありません。さすが雪国、どんな寒さにも大雪にも負けない仕組みができていることに感心します。
タンペレでのマイホームは集合住宅でした。外気温が下がると自動的に建物全体が暖房で暖められます。外がどんなに冷えても室内の温度は一定に保たれるので、とても快適です。朝目覚めて、「寒い、寒い」と言いながらストーブをつける必要はありません。窓ガラスも2〜3重構造になっていて断熱性が高く、室内はとても暖かいため、薄着でいられます。冬の寒い時期は、日本でも温暖な地方より雪国の室内の方が快適なものですね。
息子が初めて保育園に通い始めた1月のある日、窓の外に取り付けられている温度計を見ると、なんとマイナス25度!外に出るのは気がひける気温です。恐る恐る外へ出てみると、氷点下と一口に言っても、慣れたマイナス10度とマイナス25度との差は歴然、外気に触れている肌に痛みのようなものを感じます。鼻の中の水分が凍ってしまうからでしょう、むずむずしてきます。
さすがにマイナス25度にもなると、保育園でも子供たちは室内で過ごしますが、マイナス10度くらいまでなら、スキーウェアを着て、毛糸の手袋の上にスキーなどに使う厚手のグローブ、雪用のブーツでしっかり防寒して、外で遊びます。防寒着から覗くピンクのほっぺの子供たちは寒くてもいつも元気いっぱいです。
気温の低い、晴れた日に、マットやラグをパンパンと叩いて日なたに干す光景をよく目にしました。
氷点下の温度は殺菌作用があるから、晴れた寒い日に干すのよ。
と、フィンランドの友達が教えてくれました。
低温を活用する生活の知恵も寒い国の特徴を表していると思いませんか?
では、気温の低さを象徴するエピソードをもう一つ。
この時期は湖の氷も日増しに厚くなり、氷の上を歩けるくらいの厚さになります。そんなある日、私にも湖の上を歩くチャンスが訪れました。当時、1歳だった長男はベビーカーで昼寝中。まず自分が氷の上に乗って割れないことを確認して、ベビーカーも氷の上に乗せました。あたりには、臆せず湖の真ん中を歩く人々もいます。
氷は割れません!
こんなに大量の水をカチコチに凍らせてしまうフィンランドの冬の寒さに驚ながらも、凍った湖を歩くワクワク感をはっきりと覚えています。
こんなふうに氷の上を歩いたり、氷に穴を開けて釣りをしたりと、フィンランドの冬ならではのアクティビティーをたくさんの人が楽しみます。
私の暮らしていたタンペレの北側にはNäsijärvi(ナシヤルビ)という大きな湖があって、週末には湖を歩くイベントが行われます。岸から数キロ離れたゴール地点に向かって思い思いの散歩を楽しむのです。氷点下とはいえ、太陽の下を一生懸命歩くととてもいい運動になります。ゴール近くに張られたテントで売られるフィンランドのソーセージ Makkara(マッカラ)やドーナツ、コーヒーをお供に、ポカポカに温まった体を休め、この時期にしか見ることのできない湖の中心部からの雪景色を満喫します。
この時期に食べられる焼き菓子で、ルーネベリのタルトという意味の「Runebergin torttu」を紹介しましょう。ルーネベリとはJohan Ludvig Lunebergという19世紀の詩人で、フィンランド国家の作詞をしたことで知られています。ルーネベリの妻が甘い物好きの夫のために作ったのがこのタルト。彼の誕生日の2月5日頃になるとパン屋さんやスーパーマーケットでもたくさん販売され、フィンランド人なら誰もが知っている、みんなが大好きな定番のお菓子です。マフィンのような見かけですが、バターとアーモンドの風味豊かなしっとりとした生地で、上にラズベリージャムが飾られているのが特徴です。
毎年決まった時期に恒例のお菓子を食べるフィンランド。毎年同じ行事があり、その時期には同じ食べ物がお店に並びます。もちろん日本でも季節に沿った昔からの和菓子がありますが、それ以外に必ずその時に流行っているスイーツがありますね。そんな日本と比べ、食べ物の流行り廃りは顕著ではありません。いつも決まったものを食べるフィンランド。それがフィンランドのスタイルなんだと思います。
比較的温暖な地域で生まれ育った日本人にとって、寒さの厳しいこの時期のフィンランドには新鮮で楽しいものが盛り沢山!
草稿: カハヴィラアムリ Kahvila Amuri, 亮子
編集 ・ライティング: LAMPIONAIO, Etsuko