
3月の最終日曜日からサマータイムが始まり、6月の夏至に向かって日に日に日照時間が長くなり、真冬とは正反対の太陽が照り輝く眩しい季節に突入します。
私が住んでいたタンペレはフィンランド南部に位置するので完全な白夜にはなりませんが、それでも夜の11時頃まで空が明るいため、夕食の後に家族で森に散歩に出かけたり公園で遊んだりして、外での活動をたっぷり楽しんでいました。




美味しそうなベリーが採れた時には満面の笑みで写真を撮らせてくれました。
バケツいっぱいに収穫したあとは、葉を取り除いてジャムやジュースを作ります。
Vadelma(ラズベリー)もよく見かけるベリーで、子供たちも散歩途中によく食べていました。フィンランドではどこの森も
自然からの恵みはみんなで楽しむ。
というルールがあって、私有地だから立入禁止ということはありません。どの森に行ってどれだけベリーを摘んでもいいのです。

自分たちで好きなように摘んで食べていました。

目の前が湖なので、ボートで釣りに行ったり、サウナでほってた体を湖の水で冷やすのに最適な環境です。
その他にも、夏を象徴する食べ物といえば、新じゃが、ザリガニ、えんどう豆などがあります。
新じゃがはディルと一緒に茹でると更に美味しさが増し、夏の食卓に欠かせない存在です。
ザリガニは湖で捕れ、好きな人はザリガニパーティーを楽しみます。日本人にとってのザリガニは「子供が夏に遊ぶ生き物」ですが、真っ赤に茹でられたフィンランドのザリガニは、エビ・カニが好きな人なら、きっと気に入る味わいです。

えんどう豆は屋外マーケットに行くと、さやに入ったままのものが山積みになって売られています。もちろん料理にも使いますが、生のまま食べるのがフィンランド流。さやから出しながらポリポリと公園のベンチなどで食べている人をよく見かけました。
フィンランドの学生は6月になると夏休みに入り、8月半ばの新学期までの約2ヶ月半の間、夏をたっぷり楽しみます。仕事をしていてもたいていの人は4週間程の休暇を取って、家族との時間、自然に親しむ時間を満喫します。4週間の休みを当たり前に取れる国、フィンランド。人生の中で仕事はほんの一部で、余暇を楽しむための時間もたっぷり持つ。そんなフィンランド流のライフスタイルは今の日本ではまだまだ馴染みませんが、人間の気持ちに寄り添った、自然で心地よい生き方だと感じます。

さて、この季節に欠かせないことが、まだあります。日光浴です。子供たちと公園に遊びに行った時に、ビキニ姿で芝生に横たわる女性を初めて見た時は驚きましたが、日照時間の短い時間が続いた後は日差しが恋しくなるのは自然なことだったのです。ビキニは泳ぐためだけではありません。日を浴びるためでもあったのです。まだ肌寒い春先でも太陽が火をを出すとすぐにTシャツになる人がいるのも頷けます。夏の太陽を逃すわけがありません。一年分の日光を浴びるかのように日なたを好んで過ごすのです。
晴れて気持ちのいい日には、湖水浴にもよく出かけました。水温は夏でもそれほど上がらないので、ずっと水に浸かっているわけにはいきませんが、湖畔は子供たちには楽しさいっぱいの遊び場で、砂場遊びをしたり、浮き輪で浮かんでみたり、時には泳いでいる鴨を観察したりした物です。湿度が低いので、日なたがいくら暑くても、木陰に入るとすっと汗がひく気持ちの良さを懐かしく思い出します。大自然の中の木陰でほっとするひとときは、私の夏のお気に入りでした。

夏至祭の頃には、多くの人々がKesämokki(サマーコテージ)での滞在を楽しみます。日本では別荘を持つことはあまり一般的ではありませんが、フィンランドではコテージやボートを持つことはそれほど特別なことでありません。友達のボートに乗せてもらったり、コテージに招いてもらうこともありました。そのコテージは豪華な別荘というよりは、あっさりした作りで自然に親しむための扉のようです。大変な準備をすることもなく、気の向くまま、余暇を自然の中で楽しめる環境も、ゆとりある休み方を支えていると思います。


そして、湖で釣れる代表的な魚は、Hauki(ハウキ=パイク)です。Marimekkoのティータオルに登場したり、子供たちが歌う歌にも登場するような誰もが知っている魚です。コテージでムニエルにして食べた時の味は忘れられません。大自然の中で自分たちが釣った魚を調理して頂くことができるなんて、他に変えがたい贅沢な経験です。またいつかそんな夏を過ごしたいものです。
夏のフィンランドは、太陽があり素晴らしい景色があり美味しい食べ物があり、仕事なんてしてる場合じゃありません。一年で最もいい時期は仕事を忘れて大切な人たちと充実した時間を過ごし、リフレッシュしてまた日常生活に戻る。合理的でもあり、心にも体にもあるべき姿です。
フィンランドの生活や食について6回にわたりお伝えしてきました。今回が最終回となります。
私の大好きなフィンランドの魅力が皆様にお伝えできていたら幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
草稿: カハヴィラアムリ Kahvila Amuri, 亮子
編集 ・ライティング: LAMPIONAIO, Etsuko